パラダイムシフト スティーブン・R・コヴィー 7つの習慣

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ある日曜日の朝、ニューヨークの地下鉄で体験した小さなパラダイム転換を、私は忘れることが出来ない。

乗客は皆、静かに座っていた。

ある人は新聞を読み、ある人は思索にふけり、またある人は目を閉じて休んでいた。

全ては落ち着いて平和な雰囲気であった。

 そこに、一人の男性が子供達を連れて車両に乗り込んできた。

すぐに子供達がうるさく騒ぎ出し、それまでの静かな雰囲気は一瞬にして壊されてしまった。

 しかし、その男性は私の隣に座って、目を閉じたまま、周りの状況に全く気がつかない様子だった。

子供達はと言えば、大声を出したり、物を投げたり、人の新聞まで奪い取ったりする有様で、何とも騒々しく気に障るものだった。

ところが、隣に座っている男性はそれに対して何もしようとはしなかった。

 私は、いらだちを覚えずにはいられなかった。

子供達にそう言う行動をさせておきながら注意もせず、何の責任も取ろうとはしない彼の態度が信じられなかった。

周りの人たちもいらいらしているように見えた。

私は耐えられなくなり、彼に向かって非常に控えめに、

「あなたのお子さん達が皆さんの迷惑になっているようですよ。もう少しおとなしくさせることはできないのでしょうか」

と言ってみた。

 彼は目を開けると、まるで初めてその様子に気がついたかのような表情になり、軟らかい、物静かな声でこう返事した。

「ああ、ああ、本当にそうですね。どうにかしないと・・・。たった今、病院から出てきたところなんです。

1時間ほど前に妻が・・・・・、・・・。あの子たちの母親が亡くなったものですから、

・・・いったいどうすればいいのか・・・。子供たちも混乱しているみたいで・・・・」

 その瞬間の私の気持ちが、想像できるだろうか。

私のパラダイムは一瞬にして転換してしまった。

突然、その状況を全く違う目で見ることができた。

違って見えたから違って考え、違って感じ、そして、違って行動した。

今までのいらいらした気持ちは一瞬にして消え去った。

自分の取っていた行動や態度を無理に抑える必要はなくなった。

私の心にその男性の痛みがいっぱいに広がり、同情や哀れみの感情が自然にあふれ出たのである。

「奥さんが亡くなったのですか。それは本当にお気の毒に。何か私にできることはないでしょうか」

一瞬にして、「すべてが変わった」。

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